大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)2413 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岡部秀温、同荒川正一の上告趣意第一点について。

論旨は、本件公訴事実第一の、(一)、(二)記載の各十万円は、被告人が、政

治団体たる平鹿横手自由党本流支部のために、政治資金として受領したものであつ

て、被告人個人が取得したものではなく、個人の選挙運動報酬でもないということ

を前提として、原判決の違法並に判例違背を主張する。しかし原判決は、右と同趣

旨の控訴趣意を排斥して、被告人が両度共、候補者Bのために投票並に投票取纒の

ための選挙運動をせられたい旨の依頼を受け、その報酬及び費用として供与される

ものであることの情を知りながら、現金十万円ずつの供与を受けた旨を判示した第

一審判決の事実認定を維持しているのである。従つて所論は、原判決の事実誤認を

前提とする主張に帰し採用することができない。

同第二点について。

論旨援用の各判例はいずれも、供与行為の共謀者間における供与資金の授受に関

する判例である。しかし原判決の維持する第一審判決は、そのような事実を認定し

ているのでなく、被告人が判示の選挙運動者等から金員の供与を受けたという事実

を認定しているのであるから、所論判例違背並に違法の主張は原判決の認定しない

事実を前提とするものであつて採用することができない。

弁護人岸達也の上告趣意第一点について。

論旨は原審において主張も判断もされなかつた事項に関するものであるから適法

な上告理由とならない。のみならず第一審判決の証拠説明にA(第三、四回)の検

察官に対する各供述調書謄本及Aの弁解録取書謄本」と記載されているのは「A(

第三、四回)の検察官に対する各供述調書謄本」及び「検察官に対するAの弁解録

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取書謄本」を指すものと解される。そうして第一審第三回公判調書中証拠関係カー

ドの二十二及び二十三を見ると、右の各謄本については、いずれも検察官から刑訴

三二一条一項二号の書面として証拠調の請求がなされ、裁判所は適法にそれ等書面

に対する証拠調を行つていることが認められる。それ故所論判例違反の主張はその

前提を欠くものである。なおAの裁判官に対する弁解録取書謄本についてはその証

拠調が留保になつていること所論のとおりであるが、前記第三回公判調書の記載と

対照してみれば、検察官においてその証拠調請求を撤回したものと解するのが相当

である。そうしてこれは第一審判決に証拠として採用されていないと認むべきこと、

前記説明においておのずから明らかであるから、所論引用の判例は適切でない。

同第二点について。

論旨援用の各判例はいずれも、他の者に供与する資金の交付を受けた者がその資

金を他の者に供与した場合の判例である。

本件被告人は他の者から一旦金員の供与を受け、後に自己の意思によりその資金

の中から更らに他の者に供与したという事実を認められているのであるから、所論

判例違反の主張は、原判決の事実誤認を前提とするものたるに帰し、採用すること

ができない。

同第三点について。

論旨は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。(第一審判決

を仔細に検討すれば、同判決の主文において被告人から金四一三〇〇円を追徴した

理由がわかる。第一審判決には所論のような理由不備の違法はない。)

同第四点並にその補充について。

論旨は事実誤認の主張に帰し、適法な上告理由とならない。

なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。

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この判決は、裁判官全員一致の意見である。

昭和三〇年三月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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